ほんのできごと。

本のことや、いろいろな出来事、日常のつぶやきなどなど

大塚明夫の語る声優魂

 
新年度に入り、途端に忙しさを増した毎日。さて、今日は本を買ってやるぞと意気込んで買ってきた中にあったのが大塚明夫の『声優魂』。このようなジャンルの本を読むのは初めてだったけれども、私のエッセイ進出は幸先の良いスタートを切られたかもしれない。
 
 
声優という職業に就いている人を好きになり、もちろんのこと自分が声優になるということへの憧れも今現在持っている。大塚明夫といえば、声優界の重鎮と言ってもいい存在なわけで。そんな彼が語る己の魂とはいかに。とっても好奇心の唆られる本であった。
 
 
 
さてさて、それでは内容についての記述に移ろうか。
一言で言えば、「やはり声優界は不安要素がありすぎる。」このことがはっきりと提示された内容であった。
 
 
生き残る声優と断腸の思いで声優界を去る人間。この両者の間には、やはり「才能」という先天的とも言えるファクターがあった。それを越えることは絶対にできないそうで。ただそこで立ち止まる人間は、そこまでの人間だったということで、人より少し秀でてるくらいの人間は、周りより頭一つ抜けるくらいのセンスを身につけるために努力しなければならない。どの業界にも当てはまりそうなものだが、声優界というか芸能界ではそれが顕著なのだろうと思う。
それに対応し続けることができる人間がどれくらい世の中にいるんだろうか。
私には具体的な数値を言われても、想像すらできないくらいの膨大な数なのだろう。だからこそ、大塚明夫には仕事がきつづけているのである。
 
 
そして今の声優に足りない部分。
それは己をステップアップさせ、自分の参加する作品の水準を自分が上げさせてやるというような気概、そして納得のいかないところではとことんぶつかるという情熱だった。昔とは声優という職業への感覚も違うのだろうが、今の声優は作品の一角を担う「役者」というよりは、むしろ「アイドル」という感覚が強い。話題性を狙う作品がたいていの場合そうであるように、人気が実力に先立つことが多くなっている。正直、それは現代に「傑作」と言われる作品が少なく、有名声優のネームバリューがないと視聴者も見る気が起きないようなレベルや内容の作品が多くなっているということも加担しているのだろうが、若手声優の活動方針にも少なからず原因はあるのだろう。
 
 
みんなから注目されたい。
不特定多数が見るアニメに出て、それが自分の出演作だと言ってみたい。
 
 
これらの理由は、これ自体では否定されるべきではないし、立派な理由でもある。しかし、これを内部にひた隠しにして、なんとなくそれっぽい演技をしてしまう人間が五万といるから問題なのだ。
ちやほやされたいという目的がメインにあるのにも関わらず、多大な人気を勝ち取るためには名作に出演しなければならない。声優という職業は、目的とそれに至るまでの過程で求められる力のギャップが大きな問題となりそうである。
 
 
 
しかしまあ、一般人から見れば、ある程度人気の固い声優は、それなりの実力も持っているわけで。
これからも私は彼らの声に惚れつつ、耳の保養として声優を追いかけていくのであろう。
 
『声優魂』、とってもおもしろかったよ!